こんにちは!!
先日ぼんやりとテレビを見ていたら、こんなコマーシャルが流れていました!
「家庭教師のト○イ、AI学習診断!」
ほほう、AI学習診断とな?
コンピューターが学力とか測ってくれるのかな?
興味を持った僕は、さっそくホームページに行ってみて内容を調べてみたのでした。
すごい!と感心する部分もあれば、う〜ん、どうなんだろ?と思う部分もあり。
そもそも学力診断とはどうあるべきなのかだろうか?
そんな疑問も持つようになったり。
今日はそのAI学習診断に絡めて、学習塾の学力診断についてお話ししたいと思います。
(2021年5月13日追記:これは藤原学習塾を作る前に勤めていた塾のお話です。藤原学習塾の話ではないのでご注意ください!)
AI学習診断について
10分で終わる学習診断
この学習診断は、中高生を対象に行われています。
1教科につき、なんと10分で終わるとのこと!
これってかなりすごいことなんですよ。
というのも各教科の各項目ごとに出来る出来ないを判定しようと思ったら、べらぼうに長いテストになってしまうのです。
私の塾も学力診断テストをやってますが、1教科につき2〜3時間はかかってしまいます・・・。
大学受験より大変なテストじゃないかと・・・。
うちの塾は入塾後もそのテストをやるので、生徒にはけっこう負担になってるんじゃないかと思います。
採点は講師がやるのですが、この採点も一苦労。
1教科につき○付けだけで20分くらいかかります。
でもこのAI学習診断はそれが10分でできると。
これは生徒の負担も軽いでしょうね。
ではなぜ10分で学力診断ができるのでしょうか?
その秘密は次の通りです。
回答は○×形式
なんと問題は○×問題なんです!
各教科の問題数は20問ほど。
これなら10分で終わるのもうなづけます。
その簡易さも手伝ってか、この学力診断は全教科で対応しています。
うちの塾で全教科学力診断をやったら、丸一日かかってしまうでしょう。
そのスピード感は、純粋にすごいと思います。
でも・・・○×問題で学力って測れるのかなという、素朴な疑問も・・・。
○×ならわからなくても適当に答えれば二分の一の確率で当たってしまいます。
勘で当てて正解したら、本当はわからなくても得意分野としてカウントされてしまいますよね。
学力診断として、どうなのかな・・・とは思うんですよね・・・。
問題数の少なさも気になります。
本当は得意分野なのに、たまたまその問題だけわからなくて不正解になったらその分野がまるまる不得意分野として判定されてしまいますよね。
手軽さを取った分、正確さが犠牲にされているかも・・・なんていうのはただの杞憂でしょうか。
多岐にわたる学習診断結果
この診断を終えた後に出てくる学習診断の結果もホームページに掲示されているのですが、その細かさに驚きました。
中一数学は全91項目にも渡って理解度が表されています。
でも不思議なんですよね・・・どうして20問のテストなのに91項目も理解度がわかるのだろう?
一問解いたら、それをもとに2項目も3項目も判定されてしまうのでしょうか?
○×テストで?
謎は深まるばかりです・・・。
学習塾に学力診断は本当に必要なのか?
選別以外で学力診断を使うことの意味・・・。
そもそも学習塾で学力診断テストを使うことの意味って、なんだろう?と思いました。
入塾テストとかクラス分けで使うなどの選別を意図したものならわかるんですよ。
学力別に指導を行うのなら、生徒の学力を把握しておく必要がありますからね。
私も生徒のレベル感を掴む意味での学力テストなら別にいいと思ってます。
でもそれなら学校の実力テストとか模試の結果とかを参照すればいいですよね。
それ以外で生徒のわからないところを判定する意味ってなんだろう?と。
わからないところがわかったほうが指導の効率がいい?
そうかもしれないですね。
でもそれってわざわざAIの力を借りないとわからないほどのことでしょうか?
たとえば仕事に置き換えて考えてみましょう。
事務の仕事をする人で伝票処理は得意だけど電話対応が苦手な人がいるとしますよね。
そういう人ってわざわざ周りから言われないと電話対応が苦手だってことはわからないでしょうか?
自分の強みは意外と気がつかないことがありますが、苦手なことというのは自分も気がつきますよね。
中学生や高校生だって、自分の苦手分野を把握できている子はけっこういると思います。
学校のテストを受けるたびにはっきり点数となって帰ってきますからね。
テストは仕事と違って結果が数値で示されるため、余計に現実を知らされるものです。
私たちが思っている以上に、子供達は現状を把握しているものと考えられます。
とはいえ、一方でそうでない子もけっこうもいるのも確かに事実です。
それはどういう子でしょうか。
それは、「わからないところがわからない」。そういう子です。
「わからないところがわからない」とは言うけれど
ト○イのホームページにもはっきりと書かれています。
中学生・高校生の「どこがわからないかがわからない」を一瞬で解決する画期的なAIが登場!
と。
「どこがわからないかわからない」
↓
「どこがわからないか分かればOK」
という図式は、簡単なことに見えますね。
しかし、「どこがわからないかわからない」という子は、「そもそも分からないところしかない」というのが実情です。
もしはっきりと「分かるところ」があるのならば、本人も自覚しているでしょうしそこ以外を勉強すれば済む話です。
それができないのは、そもそも「分からない」ところしかないから。
私の塾にはそうした生徒さんの方が多いです。
むしろほとんどと言っていいでしょう。
長い時間かけて学力診断テストをやっても、「得意なところ」「不得意なところ」がはっきり分かれることはあまりありません。
ほぼできないところだらけです。
だから塾に来るのだろうとも思います。
そう考えると、AI学習診断の意図するところもなんとなく分かる気がします。
「分からないところ」をはっきりと示すというよりも、「わからないところがこんなにあるよ!だから勉強しないとダメだよ!それを解決できるのはうちだよ!」というメッセージを込めているのかもしれませんね。
事実、私もこのAI診断を受けてみようとしたら名前から住所から連絡先からいろいろ事細かに記入しないと受けられないようになっていました。
あとでいろいろ営業の電話とか来るのかなぁ・・・なんて思いましたね。
意味がないなら絶対やらない方がいい
そういうわけで、私自身は苦手分野を調べるための学力診断テストについては従来のものだろうとAIを使おうと反対の立場です。
実際私の生徒を見ていますと、「関係代名詞は苦手だけど分詞は得意だぜ!」みたいな子は見たことがありません。
だいたいどの分野もイマイチです。
確かに細かく見れば分野ごとに成績のばらつきはありますが、それは「簡単な基礎はできるが標準レベルはダメ」といったようなものです(be動詞は分かるけど過去形はダメ、のような)。
「なんとなくやったほうがよさそうだからやっておこう」という代物だったら、やらない方が絶対いい。
実力テストや模試で代替できるのに、わざわざ長い時間をかけてやるのは生徒にとって苦痛というもの。
さっきのようなAIでやれば簡単に終わるでしょうが、先ほど話した通り簡易すぎて本当に正確なのか疑問です。
わからないところを血眼になって探すよりは、何事も基礎に立ち返って課題に向かい、着実に足元を固められるような指導をしてくれる塾を探した方が良いと思っています。
まとめ
いかがだったでしょうか。
教育分野というのはともすれば他の産業分野と比べると近代化が遅れている分野と考えられています。
学校で教えているスタイルも私たちが子供の頃とそんなに変わらないですよね。
なのでAIとかITとかそう言った言葉が入ると、余計に斬新で効果があるかのような印象を受けてしまいます。
しかしAIを導入しようがITを活用しようが、結局は人間が学習して人間が解答を作り出すという点は変わりません。
事の本質を見失わず、情報に流されないでしっかり教育を提供してくれる場所を見いだせる目を養いたいですね。